冒険。
これほど胸が踊るものはない。

私は幼い頃から冒険が好きだった。
そして、今でも。
大冒険の概要
まず、走行データがこちら。
【メンバー】単独
【日程】8月下旬の金夕〜日夜
【天気】快晴、都心は35°C
【記録】
<金曜>
自宅 0km
-16:40 大学 29km
17:57-18:04多摩川河口 0m 54km
23:33-44 奥多摩駅 137km
<土曜>
2:19-2:30 雲取山登山口(三条の湯) 929m 164km
4:43-5:24 雲取山山頂 2017m
■続きは、次回の記事で紹介
走行ログは以下の通り。

高度グラフには大きく5つのピークが示されている。つまり、5つの山に登ったということだ。
2つ目と3つ目のピークの間にあるピョコは柳沢峠(1472m)である。
ストラバのデータをまとめると、次のような形だ。

今回の冒険で登った山はこちら。
雲取山2017m 百名山
笠取山1953m 多摩川源頭
大菩薩嶺2057m 百名山
乾徳山2031m 二百名山
茅ヶ岳1704m 二百名山
また、意識したことは以下の通りである。
東京湾で夕陽を見て雲取山で日の出を拝む
多摩川を海から源頭まですべて辿る
道中の百名山・二百名山は必ず頂を踏む
本当は、最終日はもう1つ二百名山を登る予定だったが、失敗した。
それでは、冒険のあらすじを紹介していこう!
装備
詳しく書くと長くなるため、別記事にまとめよう。

登山より積載量がシビアなため、軽量化を目指した。
ここでは、簡単に触れるに留めておく。
スタイル
チャリ登山なので、
フラットペダル+トレランシューズ
というスタイルで出発した。
フラペは見た目もダサいし、疲れやすいと言われるが、サッと登山ができたり、輪行がスムーズにできたり、(別に登山用シューズを持たなくて良いので)軽量化できたり…。
私の旅スタイルでは、フラペの方が都合がいいことが多い。
しかも、ビンディングよりキツイぶん、トレにもなる。
ウェア
天気は快晴、気温が37°Cと目が眩むような暑さとのこと。強い日射からどう身を守るかに重点をおいた。用意したのは以下のアイテム。
サイクルジャージ(半袖・半パン)
サイクルグローブ(3本指切り)
アームカバー
ヘルメットインナー(首も保護)
下半身加圧タイツ
特に、太字で示したものは役に立った。

日焼けを防ぐだけでなく、ライド中に水を含ませる(浴びる)ことで体温を下げることができた。

食糧
登山と違って、基本的に下界の移動なので、その都度補給しながら進むことにする。
気をつけるべき点は、
奥多摩〜甲府盆地まで補給ポイントが皆無
だということだ(ナイトライドの場合)。
最終コンビニは古里駅のセブン。ここで大量の菓子パンを購入して臨もう。
今の時代、当たり前かもしれないが、
支払いは電子マネーorクレカ
いちいち、小銭を出したりするのは非効率だ。
飲料
私は貧乏大学院生なので、水はトイレの手洗いや山の湧水を利用する。これは学部時代から敢行していることであり、場合によっては沼の水も飲んだため、胃腸はかなり鍛えられている。
そして時々、炭酸飲料を起爆剤として用いる。
アプリ
私が重宝している登山用と自転車用のアプリは以下の通り。
Geographica:国土地理院地形図の表示が美しい。GPSロガーとして。バッテリー消費が少ない(–3%/h程度)。
YAMAP:登山道のコースタイムと水場情報を調べる。
STRAVA:自転車の走行ロガー。バッテリー消費が激しい(–7〜10%/h程度)。
どれも自信を持っておすすめしたい。
登山用アプリであらかじめオフラインマップをダウンロードしておく(無料)。
ちなみに、私はガーミンのGPSは所持していない。
いざ、出発!
今回の旅のテーマの1つに、
自分の限界に挑む
というのがあった。
そのため、少なくとも往路は交通機関を一切使うことなく移動した。
自宅〜東京湾
まずは、東京湾まで移動しなければならない。
その前に大学に立ち寄らなければならない(やるべき実験が残っていた)。
相変わらず、猛暑の30kmジテツウはなかなか堪える。だが、旅の出発日となっては、快晴の空が期待を高めてくれる。

大学に到着後、ささっとシャワーを浴びて実験に取り組む。そして、いざ出発という頃に先生からSlackが入り、実験計画について少し詰める。
思わぬところで、時間を食ってしまった。東京湾の日の入りに間に合うように、急いで支度して大学を出発!

乗り方がスマートなロード乗りを発見。偶然行き先が同じようで、文京区から大田区までご一緒させてもらった。

東京タワーを背後にして、ひたすら南下。

第一京浜は思ったより走りやすい。
交通量も気にならず、路面もきれいだ。
第一走行車線はガラ空きだったので、順調に飛ばす。

大師橋(だいしばし)は多摩川にかかる橋では最も美しいと思う。
東京湾で日の入り
50km以上走って、ようやく到着した。
Google マップで調べると多摩川右岸の方が湾に出ているため、そちらに移動。CRは車3台が並べるほど広く、多くの人が散歩やジョギングを楽しんでいた。
大師橋から河口まで3kmほど移動する。
ところが、

なんということだ。
新しい橋の架橋工事で先へ立ち入れなかった。
仕方ないので、ここ(海から700m)を起点にする。

この奥に見えているのが、新しい橋らしい。

でも、美しい夕陽を見られたからOK!
(後で聞いた話によると、この時、雲取山では雷雨だったようだが)
東京湾〜奥多摩駅
ここから先は、多摩川CRを走る。
都内の大規模CRだが、歩行者が多い、注意喚起の段差が多い、途中でダートがあるなど、不便な点も散見される。
最初は神奈川側を選択したが、5kmほどでダートに案内され、さらに大きく迂回させられた。これで神奈川に愛想を尽かした私は東京側にチェンジ。

しかし、歩行者が多すぎて危険を感じ、世田谷〜調布は主に並走する車道を走った。この辺り、CRもダートが続いたりするので、車道選択で良いだろう。ただ、車道も路肩がほとんどない割りに交通量が多いため、ストレスは溜まる。神奈川側に逃げるという手もあるが、巡航速度が大きいのは間違いなく車道である。

途中、スーパーいなげやでトイレ休憩&店内でクールダウンしてリフレッシュさせた。
気温は夜でも30°Cを超えており、全身が熱っぽい。涼みながら補給したく、イートインスペースを探したが、なかった。進もう。
結局、名もなき公園で補給タイムをとった。

ナイトライド中はこのように、明るくてベンチのある公園を選ぶようにしている。
登山のテントでも言えることだが、食事は食べ物がはっきりと明るく見える方が、おいしさが増すのだ。
この公園で自作おにぎりを2つ食べた。コメ1.4合相当である。暑すぎてやや劣化しており、なかなかキツイ笑。
この先、多摩川CRへの復帰を何度も試みたが、ダートが出てきたり、注意喚起用の凸凹で消耗したり、真っ暗すぎて寂しくなったり…。
再び車道に戻った。r29(奥多摩街道)は路面が滑らかで、自転車レーンも表示されて、交通量も気にならず、非常に走りやすかった。
奥多摩へ向かう場合、
CRはやめて、奥多摩街道を走るべきだ。
この後、東青梅駅で深夜まで営業しているスーパーMARUFUJIに立ち寄り、1.5Lコーラを買う。2年ぶりくらいの炭酸飲料である。別のブログで炭酸飲料を起爆剤として使う話を目にして、私も試しにやってみた。
うん、普段あまり飲まないこともあって、新鮮な感じだ。
気のせいか、この先もペダルは軽くなった。
さて、青梅から先のR411(青梅街道)は極めて走りやすい道だった。
時折、走り屋が通るが、路面は滑らかでいやらしいアップダウンもない。森の香りが漂ってきて、ナイトライドにはおすすめの道だ。
最終コンビニは意外と遠かった。青梅線の車両が明るい塊となって何度か隣を走り去っていく。
忘れてはいけないこと。
古里駅前の最終コンビニでしっかりと補給する。
絶対に通り過ごしてはいけない。
これから、私は無補給で柳沢峠越えに加え、雲取山・笠取山・大菩薩嶺を回る予定なのだ。
今回は、チョコステックやバターロールなど5袋を買った(2500kcal以上)。

これだけあれば、大丈夫だろう。
古里駅から奥多摩駅まではすぐだ。海沢橋という看板を見て、過去を懐かしく思い出した。ここから伸びる林道の先かあら、海沢川に入渓して沢登りしたことがあるが、台風直後でただでさえ怖い沢が凶暴化していた。
奥多摩駅には23:30に到着した。

最も驚いたのは、トイレが一新されていたこと。とっても綺麗!
奥多摩駅で何度寝たことか。観光案内所の下が、雨を凌げる絶好の寝場所であり、これまで大変お世話になった。いつもどこかしらの大学山岳部が寝床としているのだが、今日は寝ている人はいなかった。まだ、終電ではないので、これから来るのだろうか?

走行距離は137kmと随分走ったが、これからである。
奥多摩駅〜後山林道入口
まだまだ先は長い。
CAADXに跨って、ペダルに足を乗せる。
奥多摩周辺の沢は学部時代によく通っており、道を走っていると当時の記憶が蘇ってきた。
大地に自分の足跡を残す。
これほどロマンに満ち溢れたことはないだろう。

深夜0時過ぎの奥多摩湖は20°Cと涼しかった。都心は30°Cを超えているのだろう。
後山林道
後山林道とは、全長9kmの未舗装林道だ。
橋や急勾配箇所・崩落多発箇所はコンクリ舗装されているが、全体の5%程度で、残りの95%は未舗装である。
地図読みができると見落とさないが、やはりGPS代わりのスマホがあると便利だ。
林道入り口は緩い右カーブに突如現れる。
いきなり始まる急坂が特徴だ。雲取・飛龍山登山口の表記もあるので、迷いはない。
舗装は最初の10mほどで、それ以降は未舗装の砂利道が続く。
お世辞にも走りやすいとは言えない。
28Cタイヤはことごとく砂利や石に弾かれて、バランスを失った。空気圧を下げればもう少し走りやすくなったかもしれない。
夜中の1時に後山林道ゲートに到着。
自動車はこのゲートでブロックされるが、チャリはまだ先を進める(この時は気づかなかったが、車両進入禁止と表示されているので、軽車両であるチャリの進入は黒よりのグレーかもしれない。今後、走行を考えている人は問い合わせて確認されたい)。
<追記 2020.09>
登山者のチャリ進入は今でも多く、黙認されている印象がある。しかし、頑張って徒歩で歩いている方からネガティブな印象を受けやすいので、堂々とチャリを使うべきでない。

ゲート右横にある、この2本の柵を越えれば良い。

この先は、比較的進みやすい道が続くが、場所によっては鋭利な石が転がった急勾配な箇所も出てくる。
私のチャリにはパンクに強いタイヤを履かせているため、サイドカットなどはなかったが、リアタイヤがゴリゴリ削れた。

MTBなら楽しいのだろうが、シクロクロスバイクはなかなか進まない。後輪が空転する→バランスを崩す→諦めて手で押すの繰り返しである。
話はずれるが、アマゾンで購入した中華ライトはとっても明るくていい仕事をしてくれた。

詳細は、以下の記事を参照されたい。
登山口〜雲取山山頂
林道終点に到着!
この時点で走行距離は164km。

未明2:20である笑。
ワークマンで購入した折り畳みザックに必要な行動食と飲料ボトル、ウェアを詰め込む。
これから張り切って登っていこう!
林道終点から20mほど進むと豊富な湧水があった。

水は汲めるときに汲んでおくのが鉄則である。この先も安全に水を得られる保証はないからだ。
一睡もしていないのに、足取りは極めて軽く、久々の登山を身体全身が喜んでいるようだった。
コースタイムの2倍の速さでの登頂を目指す。
高度差1100mを2時間で登る計算だ。1時間で550m?いけるっしょ。
私は1時間で300mの高度獲得を基準にしているが、それは30kgを背負ったときの場合である。今回は、荷物が少ない。その分、飛ばしていこう。
ここで、無茶なチャレンジを思いつく。
それが無補給で雲取登山である。
これは一種のトレーニングだ。自分を追い込むことで、さらに強い自分が生まれる。
実際に敢行した。水分以外は摂取しない。
三条の湯までは小型運搬車(キャタピラ付きで幅1m程度のもの)が通ったあとがあった。持参したモンベルのライトは電池残量が少なかったため、チャリ用のライトを使用した。

三条の湯は秘境感溢れるところで、車では到達できない。温泉もあって、ゆっくり楽しみたいところだ。だが、私は先を急ぐ。休む暇はない。日の出に間に合わせないといけない。
山荘の先で少し道迷いした。真っ暗だと道標も道の作り方もよく見えない。特にテント場の道が交錯しているとややこしい。少し降って沢を渡るのが正解だった。
これで5分ほどタイムロス。痛手にならなければいいのだが。
この先も雲取山登山道というだけあって、歩きやすい道が続いた。傾斜は急だが、ナイトハイクにおすすめできる。
急登の箇所は100m/6minのペースで高度を上げた。
チャリと登山で使う筋肉は大きく異なり、登山用の筋肉は全く消耗していない。ガシガシ登っていく。
ところが、この先、1550m付近でおかしなことに気づく。
いきなり、登山道が下降を続けるのだ。

ジオグラフィカを見ると、地形図の登山道から大きく外れている。
そこで、ヤマップ も見た。

すると、こちらはきちんと登山道に乗っている。
安心して進むのだが、ここで余計に100mアップ+100mダウンを強いられた。このまま尾根を直登することも考えたが、この先薮が出てくることも考えられ、無難に登山道を進む。

どうやら、災害で迂回路が取られていたようだ。
おもわぬところで、100mという大きなアップダウンが入ってしまった。このままだと日の出ギリギリになるため、さらに急ぐ。これからは水分補給の休憩も抜きだ!

急ぎ足で歩いていると、蜘蛛の巣が顔にへばりついてくる。
こんなの気にしているとキリがない。構わず進もう。

標高1900m付近で笹藪が出てきた。予想通りである。下手に尾根を直登しなくてよかった。薮は朝露がびっしりついていて、今の格好(サイクル短パン+タイツ+登山用靴下)だと足がびしょ濡れになる。
雲取山山頂には4:43に到着。日の出まで30分もある。
意外と余裕だった。

山頂には他にもトレラングループ5名とテント泊2名がいた。海から来たと言ったら、びっくりされた。
とは言え、トレラングループも奥多摩駅から徹夜で石尾根を登ってきたのだから、かなりの猛者である。チャリ好きの方がおり、その人と話が弾んだ。
だが、なんともったいないことか。トレラングループは「バスに間に合わせる」と言って日の出を待たずに再び走り去って行った。
東京側の雲取山頂は樹木で展望がよくないため、山梨側の山頂に移動する。
こちらからは、一年を通して日の出が確実に見られるスポットなので、初めてくる人は要チェックである。
また、山梨側の山頂は富士山方面の眺めも良い。
日の出は5:11だった。

いつも思うが、私が最も好きな時間帯は夜明け前である。
実に神々しい。

テント泊の方に写真を撮ってもらった。自撮りよりも上手い!
あとは、ガンガン下ろう。
朝日にきらめく生命に励まされ、その美しさにいちいち感動した。

朝ほど希望に満ちた時間は無いだろう。
これだから。

これだから、山はやめられない!

チャリでは、ヒキガエルの子どもが出迎えてくれた。
今日はこれから笠取山と大菩薩嶺に行かなければならない。
旅はまだ、始まったばかりである。



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